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HLA と新型コロナウイルス感染症との関わり
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行から数年が経ち、HLA の型(アリル)とSARS-CoV-2の症状についての知見が少しずつ報告されてきています。
当初より、日本人は重症化する患者の割合が他国と比較して低いことが知られていました。そのこととHLAの型に関連があるかもしれない報告についてご紹介します。
1. 新型コロナ感染症の重症化を抑制する可能性:HLA-A*24:02
2021年12月に、「HLA-A*24:02を持っている人の多くが新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞を保有している」ということが理化学研究所から報告されました。
HLA-A*24:02 を持っている人の季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が SARS-CoV-2 のエピトープを交差認識し、SARS-CoV-2 に感染した際に抗ウイルス効果を示します。
A*24:02 は多くの日本人が保有しており、統計学上ではおよそ10人中6人ほどの割合です。
しかしエピトープとなる部位に変異が入ると交差認識されないため、季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞から逃れる変異株(デルタ株など)も報告されています。
Kanako Shimizu, Tomonori Iyoda, An Sanpei, et al. Identification of TCR repertoires in functionally competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2. Commun Biol 2021 Dec 2;4(1):1365.
2. 新型コロナ感染症の症状が出にくい可能性:HLA-B*15:01
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校より、「HLA-B*15:01を持っている人は持っていない人の2倍以上症状が出にくい」という報告が2023年7月19日のNatureオンラインに掲載されました。
上記同様、季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が SARS-CoV-2 のエピトープを交差認識することが理由として述べられています。
B*15:01 は統計学上では日本人の10人中1~2人ほどが保有しています。
Augusto DG, Murdolo LD, Chatzileontiadou DSM, et al. A common allele of HLA is associated with asymptomatic SARS-CoV-2 infection. Nature 2023 Aug;620(7972):128-136.
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